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ゲーム内のシナリオをキャラごとに一部抜粋しています。 他キャラも順次公開予定。 |
アレン 【ユファ】……アレン。 言葉にしようと思ったのだが、どうしても良い言葉が浮かばなくて、結局行動に表すことにした。普段ならこんな思い切ったこと、絶対出来ない。でも、恥ずかしくても何でも、伝えておかなければいけないと思ったから。思い切り抱きついてみた。 【アレン】え、あ、あああ、あのっ…!? アレンは平気な顔で恥ずかしいことを言ったりやったりするくせに、やられることに対しては免疫がないらしい。あたふたしている様を見ると、可愛く見える。 【ユファ】……なんか、上手く言えないから、こんなことしか出来ないんだけど。 はっ、と。アレンが息をのんだのが聞こえた。どんな顔をしているか気にはなったが、今アレンの顔を見てしまうと絶対顔が赤くなるという確信がある。だからただ抱きついたままじっとしていた。 【アレン】ユファ……… どうして、と聞いてきたアレンの声音は、分かって聞いているような感じだった。ああ、またか。ずるいことを聞く。でも、こういうのも嫌いではない、と思ってしまう。 【ユファ】…分かってるんだろ。 そうも優しい声で言われては拒否出来ない。そうっと顔を上げると、アレンと目があった。澄んだ銀灰色の瞳。思った通り、やっぱり私の顔は熱くなった。 |
神田 【ユファ】……神田。 名前を呼ぶと、その瞳は戸惑うように揺れる。 【神田】………。 しばらくの間、沈黙が続いた。何を言おうか迷っているような。だから私はただ黙って、じっと待った。 【ユファ】ッ!? 急に体を引きはがされて、そこからすかさず反転させられる。酔いは冷めているとは言え、まだ体は多少火照っていて、上手く力が入らなかった。気が付くと後ろは壁で。目の前には。 【ユファ】な、に…… 低くて冷たい声音にゾクリと寒気が走った。…こんな声、今まで向けられたことがなかった。こいつ相手に苛立ったことはあっても、今みたいに………怖いと思ったことは一度もなかった。 さっきまでは私の顔も熱かったのに、その熱も引いていく気がした。こちらが追いつめているつもりだったのに、これでは完全に逆転だ。 【ユファ】………。 でも逃げるわけにはいかなかった。…いや、きっとどうせ逃げられない。本当のことを教えてくれるというなら、乗ってやろうじゃないか。 【ユファ】…じゃあ、教えろよ。知りたい。 そう率直に来られるとは思っていなかったらしく、神田の目が驚きに見開かれる。しかしそれもすぐに鋭い目つきに戻る。 【神田】…知ってどうすんだ。知ったところでお前は…… 神田の顔が切なげに歪む。こんな顔も今まで見たことがなかった。いったい今日はどうしたというのだろう。おかしい。……神田も、私も。 【ユファ】私が…どう受け止めるかなんて、お前に分かるわけない。勝手に決めて欲しくない。 さっきまでは有り得ないと思っていた想像が、現実味を帯びてくる。私はそこまで鈍感な人間ではない。……これで違ったら恥ずかしすぎるが。 【ユファ】…言えよ、神田。 今まで冷たい表情を作っていた神田の顔が、またさっきみたいに真っ赤になる。こういう顔をされると、嗜虐心が刺激される。エーヴェルさんも神田を虐めている時こんな気持ちになるのだろうか。 【神田】…酔っぱらってなくても、タチ悪ィ……。 神田は本当に嫌そうに眉間に皺を寄せる。 |
ラビ 【ユファ】ラビ、熱あるのか? 条件反射で引こうとしたラビの体を、腕を掴むことで留める。そして自分の額をラビの額に押し当てる。 【ユファ】……何だよこれ。どこが「ちょっとだけ」だって? そう言われて慌ててラビから離れる。言われてみれば物凄く近かった。もう少し近づけば、唇が触れるほど。 【ユファ】ち、違うからな!私は熱を測ろうとしただけで…!! 何となくバカにされているような気がして、癪に障るが、事実ではある。分かっていながらあんなに近づくなんて出来るわけがない。嫌だと思うのとは違うが、何というか……とにかく耐えられない。 【ラビ】はぁ〜…… ラビは深くため息を吐いて、ベッドに横になった。さっきは分からなかったが、顔が赤い。熱のせいか、それともさっきの私の行動のせいか。 【ユファ】ラビ……もう寝た方が良い。ゆっくり休まないと怪我も治らないよ。 |
エーヴェル 【エーヴェル】ユファ? それはまるで切実な願い事を呟くようだった。どうしてそんなことを言うのだろう。私がエーヴェルさんから離れていくなんて、そんなことあるはずがないのに。 【エーヴェル】随分と長居してしまったね。そろそろ会場の方に戻ろう。 生温かいものが頬を滑った。頬に残る涙の跡を撫でるように舌で辿る。突然のことに体は固まってしまって身動きが取れなかった。そんな私を見てエーヴェルさんはくすりと笑った。 【エーヴェル】洗面所行った方がいいね。ついていってあげるから、行こうか。 微笑んだエーヴェルさんの表情はとても優しいもので、胸の奥が温かくなったけど、やっぱりどこかもの悲しく感じて、ずっと頭から離れなかった。 |
シオン テラスに出たところで、シオンは手を離した。そして私の方へ向き直る。 【ユファ】シオン……? シオンは私の方を見つめたまま何も言わない。いったいどうしたというのだろうか。 【シオン】……すごく可愛い格好だね、ユファ。 シオンはうっとりと私の姿を上から下まで見つめた。恥ずかしくて顔が熱くなると同時に、寒気も感じた。褒められているはずなのに、何故か怖いと思ったのだ。 【シオン】そんな格好で……誰を誘ってたの? 背中がドンと壁にぶつかり、痛かった。痛みに思わず目を瞑る。目を開けると、目の前にはシオンの鋭い瞳があった。不安そうな顔をしたり、キスをしただけで真っ赤になったりしていた少年とは別人ではないかと思うくらいに……怖いと感じた。 【ユファ】シオン……何…どうしたんだよ? 嘘は言っていないのに、シオンの顔は険しいままだ。 【シオン】…! シオンの瞳が驚きで見開かれる。 【シオン】ユファ……ユファ、ごめん、泣かないで、ね…? ごしごしと目元を拭うが、涙が後から後から溢れてきて止められなかった。シオンはさっきまでの剣幕はどこにいったのか、泣いている私を見てオロオロしている。 【シオン】ああ……こすっちゃ駄目だよ。じっとしてて、僕が拭いてあげるから。 言われた通りこするのをやめると、シオンが優しくハンカチで涙を拭ってくれた。それだけで少し幸せな気持ちになる。 【シオン】君を泣かせるなんて…僕は……なんてことを…。 不安いっぱいの顔で見つめてくる。このままじゃ今度はシオンが泣いてしまいそうだった。 【ユファ】……そんなこと、ない。嫌いになるわけないだろ…? シオンは小さく頷いた。それでもやっぱりまだ不安そうで、どうしてあげれば安心してくれるだろうと考える。さっきまでは怖いと思っていたのに。 |